なぜ改訂するのか/何が変わるのか/何をすればよいのか
電子処方箋管理サービスでは、薬の飲み方・使い方を「用法コード」で記録します。 病院が発行した処方を薬局が正しく読み取るには、双方が同じコード体系を使い、 同じ意味で解釈できることが不可欠です。
しかし、現行の用法マスタ(旧マスタ)には構造上の課題がありました。
0X0XXXXXXXXX0000(自由記載コード)を使用している場合は、
本改訂に伴う影響はありません。ただし、医療情報の電子的な共有・交換のためには、
標準コードの設定が重要です。
今回の改訂の本質は、単なるコード数の削減ではありません。 旧マスタの「すべてをコード名称に詰め込む」列挙型から、 新マスタの「コード(分類)+ 補足レコード(詳細)」の二層構造への設計転換です。
(特定の条件の場合) 点眼頓用の条件指定 → 「疼痛時」旧マスタでは「疼痛時 点眼」「発熱時 点眼」「発作時 点眼」がすべて別のコードでした。 新マスタでは、投与経路は用法コードで、具体的な条件は補足レコードで記録します。 これにより、コードの組合せ爆発を防ぎつつ、臨床情報を保持できます。
| 補足フィールド | 対象 | 記録例 |
|---|---|---|
| 頓用の条件指定 | 「(特定の条件の場合)」「必要時」「適宜」のコード | 「疼痛時」「発熱時」「血糖上昇時」等 |
| 投与時刻 | 「決まった時刻に」のコード(時刻指定型) | 「8:00」「20:00」等 |
| 部位 | 外用の貼付・塗布・点眼等 | 「左眼」「右肩」等 |
名称の揺れを解消し、意味を明確化します。
| 旧コード | 旧用法名称 | 新コード | 新用法名称 | |
|---|---|---|---|---|
| 1011000900... | 1日1回朝食中 服用 | → | 1011000600... | 1日1回朝食事中 服用 |
| 1011009000... | 1日1回昼食中 服用 | → | 1011006000... | 1日1回昼食事中 服用 |
| 1011090000... | 1日1回夕食中 服用 | → | 1011060000... | 1日1回夕食事中 服用 |
「朝食中」は「朝食の最中に」なのか曖昧 → 「朝食事中」に統一することで意味を明確化
細かすぎるタイミング指定を汎用コードに集約し、詳細は用法補足レコードに記録します。
| 旧コード(すべて別々のコード) | 新コード(1つに統合)+ 補足レコード | |||
|---|---|---|---|---|
| 6 件 統合 | 1日2回 起床時と朝食前 服用 | → | 1032Z000... |
1日2回 決まった時刻に 服用 + 補足レコードに具体的な時刻を記録 |
| 1日2回 起床時と朝食直前 服用 | ||||
| 1日2回 起床時と朝食直後 服用 | ||||
| 1日2回 起床時と朝食後 服用 | ||||
| 1日2回 起床時と朝食2時間後 服用 | ||||
| 1日2回 起床時と朝食中 服用 | ||||
症状×投与経路の全組合せコード(旧マスタの最大の膨張原因)を汎用化します。
| 旧コード(症状ごとに別コード) | 新コード+ 補足レコード | |||
|---|---|---|---|---|
| 47 件 統合 | 疼痛時 点眼 | → | 2H50Z000... |
(特定の条件の場合) 点眼 + 頓用の条件指定(必須)に具体的症状を記録 |
| 発熱時 点眼 | ||||
| 発作時 点眼 | ||||
| (ほか 疼痛・頭痛・歯痛・腹痛…計47症状) | ||||
JAMI標準用法規格との整合により、病院・薬局間で 同じコードが同じ意味で解釈される。 モデル事業で発覚した混乱を是正。
「1コード=1つの意味」が保証されることで、 ダミーコードに独自の意味を持たせる運用がなくなり、 意図しない用法の取り違えを防止。
標準化されたコードは、処方動向の分析・医療政策への活用・ 臨床研究でのデータ集計など、幅広い二次利用の基盤となる。
コード数が37%削減。「疼痛時の浣腸」等、 現実にはほぼ使われない組合せコードを整理し、 類似コードの選択ミスも減少。
改訂の内容を厚労省配布 Excel・JAMI 標準用法規格・JPFHIR CodeSystem・ 電子処方箋推進会議資料等の一次ソースで検証し、課題と評価をまとめました。
| 観点 | 検証結果 |
|---|---|
| 主要コードの存続 |
「朝食前」「朝食後」「起床時」「食直前」等の主要パターンは新マスタに標準コードとして残存。 JPFHIR CodeSystem(202507版)で確認: 1011000100000000「1日1回朝食前 服用」、 1011000090000000「1日1回起床時 服用」、1012000190000000「1日2回起床時と朝食前 服用」等 |
| 投与タイミングフィールド |
用法マスタレイアウト表の「投与タイミング」フィールド(項番14)は、新マスタ全1,803件で
「0: 不要」に設定。独立した構造化フィールドとしては使われなくなった。 ※ 食事タイミング情報はコード名称自体(「朝食前」等)に埋め込まれる形で保持される。 適用ガイドコード使用時は用法補足レコード(用法補足区分5: 用法の続き)に記録。 |
| 国際標準との比較 |
HL7 FHIR R5 は Timing.repeat.when で食事タイミング(ACM=食前、PCM=食後、WAKE=起床時等)を
独立した構造要素として表現可能。日本の新マスタはコード名称への埋込み方式であり、二次利用・機械判定の面ではやや不利。
|
| 旧マスタ | 新マスタ | ||
|---|---|---|---|
| 注射コード | 393件(ダミー率 46.8%) | → | 565件(全件標準コード) |
| 注入コード | 57件(ダミー率 98.2%) | → | 28件(全件標準コード) |
| 特徴 | テンプレートコード(○回)が中心。投与方法の区別なし | → | ワンショット/点滴/持続投与、院内/在宅の場面区別あり |
旧マスタの注射・注入コードは全件が類型3(削除)。 新マスタでは注射が 393→565 件に増加し、投与方法と使用場面まで細分化された標準コードに全面刷新。 旧マスタに存在したダミー/テンプレートコードが解消され、コード品質は大幅に改善。
| 項目 | 状況 |
|---|---|
| 切替期間 | 2025年11月〜2026年7月末 = 9ヶ月間 |
| 導入率(2025年9月時点) |
全体: 35.3%(75,332施設) 病院 15.3% / 医科診療所 22.1% / 薬局 85.5% 出典: 第5回電子処方箋推進会議資料(令和7年9月29日) |
| 主要ベンダー対応 |
富士通 Japan: 対応済み(2025年7月末時点) NEC: 2026年3月対応予定(移行期間の折り返し地点) 病院向け約5,600施設、医科診療所向け約67,000施設のベンダーを厚労省が確認 |
| 移行中の仕様更新 |
2026年3月25日: 電子処方箋システムの基本機能更新 2026年3月26日: システムベンダ向け技術解説書更新 → 移行期間の真っ只中に周辺仕様が変更されている |
| 補助金 |
電子処方箋導入の補助は令和8年9月まで延長(ICT基金)。 ただし用法マスタ切替に特化した補助は存在しない。 |
本改訂は、JAMI・日本薬剤師会・日本病院薬剤師会の提言を踏まえ、
電子処方箋を安全かつ正確に運用するための基盤整備です。
経過措置期間中に、以下のご対応をお願いいたします。